「不動産売買の契約後に転勤が決まった」「婚約解消に伴って契約を解除したい」など、中古住宅の契約を結んだ後に、契約を破棄したいという結論に至ったとします。この場合、一定の条件を満たせばクーリングオフによる契約の解除が可能です。また、クーリングオフ制度では解除ができない場合、その他の手段を検討する必要があります。
本記事では、中古住宅の契約を一旦結んでしまった後に、どうしても契約を解除したい場合に取りうる手段についてご紹介していきます。
中古住宅を購入する際は、不動産売買契約を結びます。契約終了後に何らからの事情で契約をキャンセルする場合、解除を依頼する相手側に対して法的拘束力が生じる点に注意が必要です。契約不履行(解除・キャンセル)に至る2つのパターンを考えてみましょう。
住んでから瑕疵に気付いた場合
購入した物件に住み始めてから瑕疵(欠陥)に気づいた場合、不動産売買契約に定めた範囲内であれば、自己負担無く相手側に修復費用の請求が可能です。一般的に、建物自体の構造問題や設備の故障・欠陥、シロアリなどの害虫による被害などが対象範囲となります。費用の請求が可能となる期間については、個人の場合は2〜6ヶ月ほど、不動産会社の場合は2年以上という決まりがあります。
また、住宅の瑕疵の状態を確実に記録しておく必要があります。写真やビデオに瑕疵状態を収めておくと、後々のトラブルを防ぐことが可能です。またできるだけ瑕疵の状況をそのまま保全しておき、立ち会いの際に見てもらえるようにしておきましょう。
自分都合の場合
消費者保護の観点から、配偶者や家族の反対、仕事の都合などの自己都合による、不動産売買契約のキャンセルが認められています。ただし、無条件でキャンセルできるわけではなく、クーリングオフ制度などを活用し一定の条件を満たした場合のみキャンセルが可能です。ここからは、クーリングオフ制度とその他の契約解除方法についてご説明していきます。
クーリングオフ制度は、プロである宅建業者以外の売買主が利用できる、無条件に契約を解除できる制度のことです。クーリングオフにより購入住宅の契約解除を行う場合、売り主が宅建業者で買い主が一般の人である場合に限り適用されます。
クーリングオフの条件
クーリングオフには、契約場所と期日に条件が設けられている点に注意が必要です。
まず契約場所について、以下の2つのパターンに該当する場合はクーリングオフを利用することができません。
・宅建業者の事務所にて契約をした場合
・買い主が申し出た場合かつ、買主の自宅または買主の勤務先で契約(買受の申し込み)をした場合
クーリングオフは冷静になって考えた結果、契約を破棄できるように作られた制度です。そのため、買い主が冷静に考えられる環境にあり契約した場合には、クーリングオフは利用できなくなります。
次に、クーリングオフが利用できる期日の制限については以下のとおりです。
・宅建業者から書面で告げられた日から起算し、8日間が経過したとき
・宅地建物の引き渡しを受け、代金全額も支払ったとき
ご紹介した契約場所と期日の期限のいずれかに該当する場合は、クーリングオフが利用できないので注意が必要です。
クーリングオフする方法
クーリングオフを行う際には、書面によるクーリングオフの通知が必要です。口頭だけではクーリングオフしたことになりません。後々のトラブルを避けるため、クーリングオフを宣言した日時を証明できるよう、配達証明付内容証明郵便を利用して送付するのがおすすめです。
不動産契約の解除を行う方法について、クーリングオフ以外にもいくつかあります。ここからは、契約解除に利用できる手段について、それぞれ解説していきます。
住宅ローン特約を利用した契約解除
中古住宅の売買契約書に住宅ローン特約として盛り込んだ内容に基づき、契約を解除する方法。例えば、「買い主は、住宅ローンの全部または一部が否認された際、本契約を解除することが可能である」といった記載など、契約内容によって内容はそれぞれ異なります。
手付放棄を利用した契約解除
解約手付として支払った手付金であれば、支払った手付金を放棄することによって不動産契約を放棄することが可能です。ただし、相手側(不動産業者)が所有権移転登記の申請済みの際などは、履行されているとみなされ契約解除が困難になります。
契約違反を利用した契約解除
契約内容に沿って支払いや手続きを進めたにも関わらず、契約が履行されていない場合などは、契約の履行を求める催告を行います。その後、進展がないといった場合には解除の通知を行うことで、不動産契約の解除が可能です。
消費者契約法を利用した契約解除
不動産契約を結んだ相手が不動産会社などの事業者である場合、消費者契約法を活用した契約解除も検討可能です。「将来的に住宅の地価が上がる大規模開発がある」といった誤認させる説明を受けた場合などは、不動産契約を破棄できる可能性があります。
瑕疵担保責任を利用した契約解除
建物自体に構造上の瑕疵が見つかった、土地の制約によって建物が建てられない場合などは、契約の目的を全うできなくなるため、瑕疵担保責任にもとづき契約の解除が可能になります。
話し合いによる契約解除
これまでの契約解除がいずれも該当しない場合、売り主と交渉し両者が合意すれば、契約が解除できる場合があります。その際はある程度の違約金を支払うなど、一定の条件が付く場合が多いでしょう。話がまとまったら、書面により両者がサインしたうえで契約解除を行います。
ここまで、中古住宅の不動産契約を解除できるかどうかについて詳しく解説してきました。一定の条件はあるものの、クーリングオフ制度やその他の制度を活用して、不動産契約の解除を行うことが可能になる場合があります。
ただし実際には、不動産売買契約書の内容や法律にもとづいた話になるため、一般の人が判断するのは非常に難しいといえるでしょう。もし何らかの事情で不動産契約の解除を行うたい場合は、不動産業者や地元の弁護士へ相談のうえ手続きを進めるよううにしましょう。
2020.04.20
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