酷暑や猛暑のイメージはそこまでない大阪ですが、実は日本でも屈指の暑さが厳しい地域です。例年大阪では、真夏8月の最高気温は35℃以上が当たり前。暑さの厳しい年では38℃~39℃を記録することもあります。
大阪は単に暑いだけでなく、ムッとするような湿気を伴う暑さが継続することにも注意が必要です。そもそも大阪の夏では「涼しく感じる日」自体が少なく、8月の平均気温は28.8℃をマーク。
常夏のイメージがある沖縄県那覇市でも8月の平均気温は28.7℃ですので、平均気温では沖縄よりも暑いのです。そんな大阪で家を建てるなら、どんなことに気をつければ良いのか。今回は、住まいの性能について考えてみましょう。
大阪は「大阪平野」とされていますが、実は平野自体はそれほど広くありません。言わば平野というよりは北は六甲山地、東は生駒山地、南は和泉山脈に囲まれた大きめの盆地です。
周囲を山々に囲まれた盆地には熱気が溜まりやすく、夏は暑くなります。さらに、そういった土地に多くのビルやマンションが密集していることからヒートアイランド現象が起こり、大阪の暑さに拍車を掛けています。
特に高層ビルが多く、緑が少ない都市部では、より一層、耐え難いようなしつこい暑さが続きやすいのです。
北・東・南を山々に塞がれた大きめの盆地大阪は、唯一開いている西側は大阪湾に面しています。西側は大阪湾が広がっていますが、神戸と比べると、海からの風などの影響が小さいと言われています。また、湾であるがゆえに、風が止まり、ほぼ無風状態となる「凪(なぎ)」という現象があります。
風は平野部には抜けずにほぼ無風状態。そして夕方を迎えると、夕凪が起こります。日が暮れることで海水面の温度が下がり、海から陸へと向かってわずかに風が起こるこの夕凪は、海の水をたっぷりと含んだ重いもの。
湿度70~80%近くの風がゆったりと大阪湾から大阪市内へ、さらにその周辺へと流れ込み、気温30度超&湿度70~80%レベルの、極めて不快指数の高い、夏の夜を迎えるのです。
「つれづれなるままに…」から始まる「徒然草」を書いた吉田兼好は、その中の第五十五段で、「家の作りやう(よう)は夏をむね(旨)とすべし 冬はいかなる所にも住まる 暑き比(ころ)わろき(悪い)すまひ(住まい)は たへ(耐え)難き事なり」と書いています。
今風にいえば、「冬の寒さは建物の工夫や厚着をするなどしてなんとかなるけれど、夏の暑さはどうにもならない。だから、住まいづくりの基本は、夏の暑さ対策を大切にしなければいけない」というような意味になります。これは、大阪の夏のような、気温も湿度も高くなることでとても過ごしにくくなる日本の風土を見事に表現した名文だと言われています。
このように昔ながらの家づくりは、気温や湿気がこもらないようにするため、夏は涼しく過ごせるものの、冬はどうしても寒くなってしまいがちでした。ですが近年、地球温暖化を防止する様々な取り組みが行われ、建材の素材や性能も著しく進歩しています。高気密・高断熱の住宅が多く建てられるようになりました。
一般的な住宅でも夏は涼しく冬は暖かく、一年を通して快適に過ごせる家が実現します。とはいえ、どのような住宅会社で建てても同じように高気密・高断熱の家になるというわけではありません。家づくりを依頼する側も断熱性や気密性について理解を深める必要があります。
家の外と内の熱の出入りを防ぐ断熱材が注目され、進化しています。
断熱材は原料別に3系統に分かれます。現在、市場に出回っている断熱材の数は20種類以上もあると言われています。
【鉱物系】
〇グラスウール
ガラスを熔解して繊維状にし、接着材を吹き付けて成形した断熱材。不燃材料として認められていて、日本だけでなく北欧や北米でもよく使われています。
〇ロックウール
玄武岩や鉄鋼スラグなどを溶かして繊維状にした断熱材。グラスウールと同様に不燃材料です。
【石油系】
〇ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)
ポリスチレン樹脂に発泡剤や難燃剤を添加してビーズ状にしたものを発泡成形した断熱材です。
耐水性があり、軽くて衝撃にも強いという特徴があります。「発泡スチロール」として知られています。
〇押し出し法ポリスチレンフォーム
材料は上記ビーズ法とほぼ同じですが、成形方法が異なります。
硬質で耐圧力があり、吸水・吸湿性が小さいのが特徴。外張り断熱工法や家の基礎部分の断熱材に用いられます。
〇硬質ウレタンフォーム
ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えて成形したもの。外張り断熱では定番の断熱材です。
〇高発泡ポリエチレンフォーム
ポリエチレン樹脂に発泡剤を加えて成形したもの。
他の石油系断熱材より柔軟性があるので狭い部分に充填しやすいという特徴があります。
〇フェノールフォーム
フェノール樹脂に発泡剤や硬化剤を加えて成形したもの。
長期的に安定して断熱性能を保つという特徴があります。
〇ポリエステル
ペットボトルを再生したポリエステル繊維でつくられます。熱を加えると形状が固定されるので、接着材が不要です。
ホルムアルデヒドを発生せず、また万が一燃えても炭酸ガスと水に分解されるため、有害ガスを発生しないという特徴があります。
【自然系】
〇セルロースファイバー
新聞の古紙などを粉砕して綿状にした断熱材。グラスウールよりも吸音性能が高いのが特徴です。
〇ウール
羊毛が原料。自然系の中では安価で、最近よく使われるようになってきました。
断熱性能では石油系が、防火性と価格面では鉱物系が優れています。自然系は断熱材の製造過程で排出するCO2が少ないため、環境配慮面では優れていますし、自然由来の素材であることから健康的だとも言われ、最近人気の断熱材です。
一般的に鉱物系のグラスウールやロックウールは透湿性があるため、施工時に防湿層をつくる必要があります(最近は防湿層が最初から備わったグラスウールもあります)。このように断熱材にはそれぞれ一長一短があるため、何を優先するかによって選ぶべき断熱材が違ってきます。
また、どんなに断熱性能の高い断熱材を選んでも、それを隙間なく敷きつめて家を覆わなければその性能は発揮できません。重要なのは、断熱材の種類よりもしっかりと断熱すること。そのためにも、信頼できる工務店を選びましょう。
2020.09.23
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